Emmet Gowin ♞ エメット・ゴーウィンとセント・ヘレンズ火山941~
ゴーウィンがセント・ヘレンズ山の大噴火の跡を記録しようと考える契機になった背景には、つながった二つの理由があった。その一つは、妻イーディスの親類の者たちが次々に亡くなり、残った家族が土地を離れていったために、ゴーウィンのテーマに変化をきたしたことだった。大家族の枝葉が離ればなれになっていった代わりに、大家族の根っ子を支えていた土地・大地への関心だった。もう一つは1975年に息子とヨーロッパ(主にイタリア)に旅し、大地に刻みこまれた幾何学的な耕作地や伝統的な丘陵の見事な畑を目にし(8×10で撮影)たことが重なった。そうした土地・場所は、そこに生きる人々の生存の’根’であり、「存在の核心を貫いている場所」(ゴーウィン)」だった。そして1980年に大噴火した米国ワシントン州(イチローが所属するマリナーズ、シアトル市がある州)にあるセント・ヘレンズ山の大噴火の撮影である。大自然の威力を前に、人々の生存としっかつつながり合っていた自然の風景も木っ端微塵に根絶やしにされていまうのだ。大自然の前に人間的な自然の風景もひとたまりもないことをゴーウィンは上空から知る。と、同時に大自然がもたらした破壊の跡に美しくも神秘的な火山灰と氷河がつくりだす予測を超えた光景に慄然とするのだった。ゴーウィンの視知覚はここにきてさらに飛翔していく。 |
